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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(オ)700号 判決 1954年7月16日

主文

原判決中上告人ら敗訴の部分を破棄する。

本件を高松高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人の上告理由は別紙のとおりである。

原判決は、上告人畠山重三郎は、(一)上告人横浜雄三、同石川伊太郎連帯保証の下に、昭和二四年一月一七日被上告人から二〇万円を弁済期同年三月一七日利息日歩三銭五厘の定めにて借り受け、(二)単独にて同年四月一日被上告人から二〇万円を弁済期四〇日の後の定めにて、同上告人所有の新造船と網とを担保として借り受けたこと、この債務に対し、上告人畠山は(イ)同年七月三〇日金三八、九二九円(ロ)同年九月九日金二一一、九〇〇円の被上告人に対する各売掛代金債権を以て相殺の意思表示をしたが、相殺充当の意思表示はなされなかつたことをそれぞれ確定した上、右(一)、(二)の債務は相殺の意思表示があつた当時いずれも弁済期にあつたから、民法四八九条二号により債務者のために弁済の利益の多いものから先に充当すべく、連帯保証人の有無と担保物件の有無を基準として(二)の債務がこれにあたるものと認め、先ず、(イ)の相殺により(二)の債務の元本の一部に、次に(ロ)の相殺により(二)の債務の残部、(一)の債務の利息及びその元本の一部に順次充当されたものと判断したこと原判文上明らかである。しかし法定充当によるべき場合に、仮に(二)の債務が債務者のために弁済の利益が多いとしても、なお、先ず(一)の債務の利息に充当しなければならない(民法四九一条)のであつて、この点において原判決は法定充当に関する法規の解釈を誤つたものといわなければならない。それのみならず、民法四八九条二号により(一)及び(二)の債務を比較するに当つては、さらに利息の有無、担保契約の内容等諸般の事情を考慮するを要すべく、その結果はいまだ必ずしも(二)の債務が債務者のために弁済の利益が多いものと即断することはできないから、原判決は理由を備えず、審理を尽さない違法があるといわなければならない。論旨は結局理由があるに帰するから、原判決中上告人敗訴の部分を破棄し、本件を原裁判所に差し戻すべく、民事訴訟法四〇七条一項により主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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